ネィティヴは頻繁に「句動詞(Phrasal verb)」を使いまくります。
その中でも「他動詞」と「副詞」の間に「目的語」を挟む「挟み込み型」も頻繁に登場。
我が家でも夫が息子によく言う「挟み込み型」の台詞をあげると、
It’s already late.
Please turn the TV off.
(もうこんな時間だ。テレビ消して。)
これは、”turn off the TV” と全く同じ意味ですが、目的語(the TV)の位置が「副詞(off)」の後のケースですね。
夫の台詞で登場した“turn the TV off” は、「動詞(turn) + 目的語(the TV) +副詞(off)」で「挟み込み型」。
特に、代名詞を使った場合の「挟み込み型」は頻繁に会話でもメールでも登場!
例をあげますと、オーストラリアの番組で「Parental Guidance」ってのがありました。
全く異なる「子育てスタイル」の10組の両親が、それぞれの子供のしつけについて意見をぶつけ合うのですが、これに対するある記事タイトルに
‘I tried watching Parental Guidance. Within 20 minutes, I had to turn it off.’
(番組”親の指導”を見てた。20分以内で消すはめになった。)
引用元:Parental Guidance TV show: Why I stopped watching/mamamia.com.au
さて、この挟み込み型を習得されてる方はご存知だと思いますが、目的語の位置のルールで「目的語を代名詞にする場合」は、必ず「他動詞」と「副詞」の間に置かなければなりませんね。
何故でしょうか?
句動詞の目的語が代名詞なら「挟み込み」にしなければならない理由
ちなみに夫と息子に聞いてみました。
「代名詞ー挟み込み型」と「代名詞ー文末」の場合のイメージの違いです。
こんなイメージになるそうです。↓
ちなみに英語は「左→右」つまり文頭からどんどんイメージするので、彼らの頭の中を再現しました。息子が長時間テレビを見ているシーンです。
上段は挟み込み型ですんなり「テレビを消す」イメージに流れるけど、下段の”turn off it”は「そんな英語は聞いたことがない!一体何語を話してるんだ?」ってなるそうです。
ではその理由に移ります。
理由その1:英語の文の構成
英語の文章構造と関係するそうです。
英語は文末に「新しい情報」や「重要度の高い内容」を持ってきます。
In English grammar,
“end-focus” is the principle that the most important information in a clause or sentence is placed at the end.
End-focus (also known as the Processibility Principle) is a normal characteristic of sentence structures in English.
引用元:Thoughtgo.com/End-focus in Sentence structure
訳)英文法では、文末重点は、句または文の最も重要な情報が最後に配置されるという原則です。
文末重点(処理可能性の原則とも呼ばれます)は、英語の文構造の通常の特性です。
しかも目的語を持つ「句動詞」の場合は、その目的語となる「名詞」はとても重要な存在。
一方、同じ目的語でもそれが「代名詞」だと情勢が一変!
というのは、「代名詞」の役割は、既に先の会話で登場した重要度の高い内容語である「名詞」の2番手として代わりに使われるもの。
その重要度の低い、新情報ではない「代名詞」を句動詞の大事な目的語として後ろに置くことは、ネィティヴ的に何とも奇妙に受け取られるようです。
彼らのイメージとしてはこんな感じ。
彼らは文法など習わずに句動詞を使いまくっていますが、このルールに限っては文の構造上おかしい!って感じるようです。
理由その2:英語の強弱リズムの関係
英語を話す時には「強弱とリズム」が命です。
これはSentence Stress(文の強勢)の記事で取り上げました。
なので「文の強勢」からしても「代名詞」は重要とされず弱く発音されます。
句動詞の場合、「動詞」よりも「副詞」の方がやや強調されて発音されます。
理由は、「副詞」が「動詞」の動きを決めるから。
息子に続けて発音してもらいました。(赤い部分が強調されてます)
「他動詞-turn」よりも「副詞-off」がやや強め、目的語の「名詞-TV」も強調されてます。
それ以外の「冠詞-the」と「代名詞-it」は弱く発音されます。
✅ Túrn ÓFF the TV.
✅ Túrn the TV ÓFF.
✅ Túrn it ÓFF.
❌ Túrn ÓFF it.
最後の”Turn off it.” になると
No, it doesn’t make sense…
(意味なさないよ。)
今度は旦那に発音してもらいました。
✅ Túrn ÓFF the TV.
✅ Túrn the TV ÓFF.
✅ Túrn it ÓFF.
❌ Túrn ÓFF it.
(そんな言語、聞いたことがない!というのをあえて発音してもらいました。)
やっぱりリズム的にもおかしくなるんですね。
英語特有のリズムが取れず、ロボットみたいです。
挟み込みが出来るかどうか「左→右」でイメージしてみよう!
挟み込みが出来るのは(英語サイトではseparableと表示)は、「他動詞+副詞&目的語」の組合せだけ。
同じように目的語を必要とする組合せでも
「自動詞+前置詞&目的語」や「自動詞+副詞+前置詞&目的語」の場合は出来ません。
理由は、自動詞型の場合は自動詞が「〜に、を」の助詞的役割を含まない為に、前置詞を自動詞の後ろ、目的語の前に置いて繋げる必要があります。
だから「前置詞と目的語(名詞か代名詞)」を切り離すことは出来ない。
でも厄介なのが「これって前置詞?副詞か?」どうやって見極める?
同じ単語でありながら両方の役割をするのがいっぱい。
「他動詞」か「自動詞」で見極められるなら簡単ですが、ネィティヴでない限りこれも使って訓練するしかないのです。しかも「他動詞」と「自動詞」の両方の意味になる単語がほとんど。
そこで英語を英語で理解する訓練にもなるので、「左→右」でイメージすると意味を成すかどうか判断しやすくなります。
ポイントは「副詞」は「動詞」の動きに影響を与える!
「前置詞」は後にくる目的語の「名詞・代名詞」に働きかける!
ではイメージ像を挙げてみます。
pick up (副詞編)
pick up + 目的語(名詞)のイメージ
*上段”pick up John“
①pick up→誰かを迎えに行くイメージ ②John →それはジョンだ!
*下段” pick John up“
①pick John →ジョンを選ぶイメージ ②up →迎えに行くぞ!
どちらも「副詞-up」は「動詞-pick」に働きかけるので「挟み込み型」でもジョンを迎えに行くイメージは一緒。
pick up – 目的語が代名詞のイメージ
目的語が「代名詞」の場合のイメージです。前述したように文末に持ってくると構造上、曖昧になる事と「強弱リズム」でもおかしくなる為、使えませんね。
put on(副詞) 編
put on &目的語(名詞)のイメージ
“put on 〜” は、「〜を着る、被る、はく」など身につける場合に使われますが「左→右」へと文頭からイメージすると
*上段 ”put on your t-shirt.”
①put on→何かを身につけるイメージ ②t-shirt →それはTシャツ!
*下段 ”put your t-shirt on.”
①put your t-shirt →Tシャツを持ったイメージ ②on →身につけるんだ!
どちらも「Tシャツを着てちょうだい!」と「副詞- on」は「他動詞-put」に働きかけてるので同じ意味になります。
無理やり挟み込んでみたイメージ「自動詞+前置詞&目的語」
では、挟み込めないパターンをあえて挟んでイメージしてみます。
get on(前置詞) &目的語(〜に乗る)の場合
*上段:got on the bus
①got on →何かに乗るイメージ ②the bus →それは「バス」!
*下段:got the bus on
①got the bus →「バス」を手に入れた! 😯
②on → ?意味不明「turn on」のon? エンジンかけた?
この「on」は「前置詞」の「on」なので後にくる「名詞-the bus」に働きかけています。それを分離してしまうと、まず「バスを手に入れた 😯 」とイメージされます。
「句動詞」は本当によく使われます。
聞いたり読んだりする場合は「意味」さえ分かれば問題ないのですが、いざ自分が使う側になると「あれっ?この句動詞は挟み込み出来るパターン?」と困惑してしまいます。
句動詞をただ丸暗記するのではなく、「他動詞+副詞&目的語」の型であれば「挟み込み型」も一緒に例文を作って口に出す練習をお勧めします。
お勧め教材
英語圏で非ネィティヴが学ぶ用に「句動詞のパターンと特徴」をイラスト付き、図解で詳しく説明してくれている教材です。
その句動詞が「目的語」を伴う「Transitive phrasal verb」か、若しくは「目的語を取らない」完結型の「Intransitive phrasal verb」か、更にはその両方になり得る使い方まで取り上げてくれています。
日本語での教材で、「他動詞型」と「自動詞型」にこだわり、更に「挟み込み型」まで例を挙げてくれ、もっとすごいのが「句動詞の場合のアクセント」も説明してくれている素晴らしい伝わる英語を目的とした「実践型」はこれ。
☆英語の情報構造について☆
最近少しずつ取り上げられている「情報構造」は、以前の「文法の構造」だけに焦点を当てていた教育から進化しているように感じます。
実際、会話で文頭からガンガン理解していく、或は英文を読む時ってのは「これはこの文法で、、、」など当てはめません。
文頭から理解していく訓練として「情報構造」で英文読解を訓練するのはある意味、「スラッシュリーディング」と似ていてとても効果的です。