【ハガルとイシュマエル追放】:Hagar and Ishmael sent away

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今回は「ハガルとイシュマエルの追放」について聖書に書かれている内容です。

「ハガル」の話は、エジプト人の奴隷として「アブラハムとサラの跡継ぎ」を作る代理役として利用され、そして今回のタイトル通り、二人から「追放」されてしまう、本当にかわいそうな運命を辿りますが、神の支えの元でそれが「希望と光」になっていく、そこから学ぶ教訓として今日でも多く語られています。

ざっと前回の内容を振り返ります。

アブラハムに子孫繁栄が約束されたにもかかわらず、妻のサラはもう子供を作る事が出来ない年齢に差し掛かり、跡継ぎを心配して自らの考えで、アブラハムにエジプト人女奴隷の”ハガル”を差し出し子供を産ませます。

ところが、ハガルは身籠った途端に、女主人であるサラを見下し、横柄な態度を取り始めたことから、仕返しのごとくサラは彼女をいじめ始めました。

耐えきれずに逃げ出したハガルは、天使から「謙虚にサラに仕えるよう」アドバイスを受けて戻り、無事”イシュマエル”を出産

一方で本妻サラはと言うと、その後も10年以上、アブラハムとの間に子供が出来ないまま老いていった。。。ところがここから状況が一変します。

神のお告げ通り、遂にサラも「イサク」を授かったのです。

詳しい記事はこちら。

【側妻ハガル】と【本妻サラ】のバトル:アブラハムに二人の子供。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の始祖であるアブラハム、彼の子孫繁栄とこれら宗教の源泉になる重要人物【本妻サラ】と【側女ハガル】。二人の子供の誕生から後継問題へ。西洋絵画も紹介しながら二人の女性と息子たちの誕生まで聖書をもとに日英対訳で説明します。

今回は跡継ぎを自分の子、イサクにしたかったサラの強い押しによる「ハガルとイシュマエルの追放」の話です。

前述しましたが、とても有名な話の1つで、この内容の西洋絵画もたくさんありますね。

それでは、今回も聖書を”日英対訳”で追っていきます。

名前の英語発音

聖書を【日英対訳】で学ぶと、【英語】ではどのように表現されているのかとてもいい学びになって、「教養」と「英語習得」の両方が得られるので非常にお勧めです。

特に、名前は日本語とかなり違うので、内容は知っているのに「発音違い」に陥らないように主な登場人物の名前発音を紹介しておきます。

名前の英語での発音はこちらです。(クリックすると発音が聴けます。)

*アブラハム→Abraham(éɪbrəhæ̀m)
*ハガル→Hagar (heɪɡɑː)
*イシュマエル→Ishmael(íʃmiəl)
*サラ→Sarah(séərə)
*イサク→Isaac(ɑ́izək)

ハガルとイシュマエルの追放

それでは、創世記21章に書かれている内容に入ります。

状況は、本妻サラの子供【イサク】の乳離れの宴会での事。(乳離は、当時3歳〜4歳だと言われています。)

8 さて、おさなごは育って乳離れした。イサクが乳離れした日にアブラハムは盛んなふるまいを設けた。
8 The child grew and was weaned, and on the day Isaac was weaned Abraham held a great feast.

サラは、エジプトの女ハガルがアブラハムとの間に産んだ子が、イサクをからかっているのを見て
But Sarah saw that the son whom Hagar the Egyptian had borne to Abraham was mocking,

 
10 アブラハムに訴えた。
10 and she said to Abraham,

あの女とあの子を追い出してください。あの女の息子は、わたしの子イサクと同じ跡継ぎとなるべきではありません。
 “Get rid of that slave woman and her son, for that slave woman’s son will never share in the inheritance with my son Isaac.”

 

サラは、最初は自分が出産できないと思って、女奴隷のハガルに子供を産ませる提案をしておきながら、いざ自分に子供が授かると「跡継ぎ」が心配になって追い出すように要求しました。

さて、アブラハムはどうしたのでしょうか?

11このことはアブラハムを非常に苦しめた。その子も自分の子であったからである。
11The matter distressed Abraham greatly because it concerned his son.

アブラハムは、サラハガルを差し出して、自分の代わりに子供を産む提案をした時は、サラの声を聞き入れました

でも今回は、神の声に従ったとされています。

2神はアブラハムに言われた。
12But God said to him,

あの子供とあの女のことで苦しまなくてもよい。すべてサラが言うことに聞き従いなさいあなたの子孫はイサクによって伝えられる
 “Do not be so distressed about the boy and your maidservant. Listen to whatever Sarah tells you, because it is through Isaac that your offspring will be reckoned.
 
 
13しかし、あの女の息子も一つの国民の父とする。彼もあなたの子であるからだ。」
13 I will make the son of the maidservant into a nation also, because he is your offspring.”

何故、神が「ハガルとイシュマエルの追放案」を指示したか?      

たくさんの教えがありますが、「あなたの子孫はイサクによって伝えられる」と言われた事から

イサクが跡継ぎイシュマエルではない」と言う御心に適ったもので、その代わり、跡継ぎにはしなくとも、別の計画「ハガルとイシュマエル」も祝福されたということです。

13しかし、あの女の息子も一つの国民の父とする。彼もあなたの子であるからだ。」
13 I will make the son of the maidservant into a nation also, because he is your offspring.”

その通り、イシュマエルは「アラブ人の先祖」となり、現在もたくさんのアラブ人がいて石油に恵まれた裕福な国となっていますよね。

(それが故に中東は「石油の利権」を巡っての争いにも繋がってしまう訳ですが。。)

ハガルの前に主の使いが現れる                    

さて、アブラハムは主の言う通り、ハガルとイシュマエルを立ち去らせます。

14アブラハムは、次の朝早く起き、パンと水の革袋を取ってハガルに与え、背中に負わせて子供を連れ去らせたハガルは立ち去り、ベエル・シェバの荒れ野さまよった。
14 Early the next morning Abraham took some food and a skin of water and gave them to Hagar. He set them on her shoulders and then sent her off with the boy. She went on her way and wandered in the Desert of Beersheba.

でも、とうとう水が尽きてしまい二人は死を覚悟します。

ハガルは死んでゆく息子を見ているのが耐えきれず、木の下に寝かせて自分は離れ、泣き崩れます。

そこへ主のつかい、天使が登場!

15革袋の水が無くなると、彼女は子供を一本の灌木の下に寝かせ、
15 When the water in the skin was gone, she put the boy under one of the bushes.

16「わたしは子供が死ぬのを見るのは忍びない」と言って、矢の届くほど離れ、子供の方を向いて座り込んだ。彼女は子供の方を向いて座ると、声をあげて泣いた。
16 Then she went off and sat down about a bowshot away, for she thought, “I cannot watch the boy die.” And as she sat there, she began to sob.

17神は子供の泣き声を聞かれ、天から神の御使いがハガルに呼びかけて言った。
「ハガルよ、どうしたのか。恐れることはない。神はあそこにいる子供の泣き声を聞かれた。
17 God heard the boy crying, and the angel of God called to Hagar from heaven and said to her, “What is the matter, Hagar? Do not be afraid; God has heard the boy crying as he lies there.
 
18立って行って、あの子を抱き上げ、お前の腕でしっかり抱き締めてやりなさい。わたしは、必ずあの子を大きな国民とする
18 Lift the boy up and take him by the hand, for I will make him into a great nation.”

こうして「イシュマエルの心の叫び」を受け取った神は、水のある井戸へ導きます。

19神がハガルの目を開かれたので、彼女は水のある井戸を見つけた。彼女は行って革袋に水を満たし、子供に飲ませた。

19 Then God opened her eyes and she saw a well of water. So she went and filled the skin with water and gave the boy a drink.

ハガルとイシュマエルのその後

神の助けで「ハガルとイシュマエル」は荒野での臨死体験を生き延びました。

ハガルは彼を育て、イシュマエルは熟練した弓を射るハンターとなり、やがてエジプト人の妻を持ちます。

20神がその子と共におられたので、その子は成長し、荒れ野に住んで弓を射る者となった。
20 God was with the boy as he grew up. He lived in the desert and became an archer.

21彼がパランの荒れ野に住んでいたとき、母は彼のために妻をエジプトの国から迎えた。
21 While he was living in the Desert of Paran, his mother got a wife for him from Egypt.

イシュマエルのその後

先の聖書に、「パランの荒野に住んでエジプトから妻をもらった」とあります。

パランの荒野はどこか言うと、旧約聖書、新約聖書、更にはイスラム教の主張する場所を研究された専門家の間でいろんな説があります。

ある人は左の地図の赤丸部分で「シナイ半島北部」だという説。

いやいや「パラン」はサウジアラビアにあり、「メッカ周辺の地域」であると言う説があり、地図によっても場所が違います。

 


従来の旧約聖書の地図では、ほとんどがシナイ半島北部に記載されているようです。

アブラハムをイサクとイシュマエルで共に埋葬

イシュマエルが母ハガルと共に追放された後、エジプトに近いパランの荒野に住み着きましたが、本妻サラの息子である「イサク」とはどんな関係を保っていたのでしょうか?

その具体的な説明は聖書にはありません。

おそらく、イシュマエル側からすれば、イサクが産まれるまでは「自分が100%後継者」だったところに、彼の誕生によってそうでなくなってしまった。。。

そこへ来て母親と追放されてしまうと言う悲劇。イサクを敵対していたであろう。。。と言われています。

それでも同じ父、「アブラハム」の葬儀に共に参列したのです。

マクペラの洞窟                           

9 彼の子らイサクイシュマエルは、彼をマクペラのほら穴に葬った。このほら穴は、マムレに面するヘテ人ツォハルの子エフロンの畑地の中にあった。


His sons Isaac and Ishmael buried him in the cave of Machpelahnear Mamre, in the field of Ephron son of Zohar the Hittite.

ここは、妻のサラが127歳で亡くなった時に、アブラハムが土地を購入して葬ったお墓です。


イシュマエルは、エジプトに近いパランの荒野から、遠く離れたカナンのヘブロンの土地までやって来たんです。

 

これが何を意味するか?
イシュマエルは、自分を追放した父、アブラハムを憎んでいなかった。

そして、イシュマエル89歳、イサク75歳にして二人で共に父を葬ったのです。和解したと捉えられています。

悲しい現実                             

ここまでなら、異母兄弟で対立する羽目になり、それでも父アブラハムの死をきっかけに、二度と会うことはないかもしれないと思われた二人が再会。

一緒に父アブラハムを葬るという、素晴らしい話でした。

でも、現在は?

「アブラハムの墓」は、ヘブロンにあって「イスラム教」と「ユダヤ教」両者の聖地。(キリスト教も)

パレスチナ人はアブラハム・モスクと呼び、ユダヤ人はマクペラの洞穴と呼んでいます。

現在に至るまで、イスラエル国(ユダヤ人)パレスチ自治政府(パレスチナ人:パレスチナに住むアラブ人)との間で、パレスチナの領土をめぐって対立し続けています。

聖書時代にアブラハム、イサク、ヤコブと「イスラエルの族長」に引き継がれた神との「約束の土地カナン」、子孫のモーセが引き継ぎ、ヨシュアが果たした「カナンの土地征服」=「イスラエル」の建国。

その後内乱で北イスラエルと南ユダに分裂。それぞれ北はアッシリア、南はバビロンに攻められてしまい、他国による支配下時代へ。

ペルシア、ギリシャを経て、ローマ帝国時代。

ユダヤ人はローマ帝国の支配に反発してAC66年とAC132年に独立戦争を起こすも敗戦。

2回目の敗戦年、135年にユダヤ人はイスラエル(パレスチナ)を追放されて地中海全域に離散(ディアスポラ)していく。。。と言う歴史を辿りました。
 
そこから反ユダヤ主義を生き抜く中で、19世紀に「ユダヤ人の祖国復帰」シオニズムが起こる。

そんな時、第一次世界大戦(1915−1917)でのイギリスの密約(3枚舌外交)が原因で、もう一度戻って自分達の国を作りたいユダヤ側にも、オスマン帝国の支配から逃れて独立したいアラブ人側にも「パレスチナの独立国家建設」を約束した結果、現在の「パレスチナ問題」が起こってしまいました。

1947年の国連による分割案(アラブ国家(パレスチナ)とイスラエル国家)の地図では、アブラハムの墓がある「ヘブロン」はパレスチナ側

その翌年1948年に、この案にユダヤ人側だけが承諾して「イスラエル」を建国し、次々と移動を開始。それに元々パレスチナで暮らしていたアラブ人側が反発して「パレスチナ戦争」を起こしたものの、負けてしまい更なる領土を取られてしまう。。。その後も「イスラエル側(ユダヤ教徒)」と「パレスチナ側(アラブ人、イスラム教)」との4回に渡る中東戦争が終了するのが1973年。

宗教戦争と政治、おまけに他国の介入もある非常に複雑な問題。

1993年にオスロ合意(パレスチナ暫定自治協定が締結)によって、パレスチナの自治を認めたイスラエル側の歩み寄りが評価され、和解へ。。。と思いきや、その協定を結んだイスラエルのラビン首相が1995年に裏切り者とされユダヤ人若者に暗殺されてしまう。。。

もう一つ1994年に起こった「ヘブロン虐殺事件」。

ヘブロンに住むユダヤ人医師がモスクの「イサク(アブラハムの息子)の広間」に入り、礼拝中のイスラム教徒に向かって銃を乱射し、パレスチナ人29人を殺害。150人を負傷させた事件。一説には、犯人は複数いたとか。(つまりイスラエル軍も乱射した?)

その後イスラエル政府は和平に消極的どころか、どんどんアラブ領土(パレスチナ人居住区)を占領。

1997年、ヘブロンも占領。

イスラエル軍は、アブラハムの墓に、新たにユダヤ人専用礼拝所を設け、パレスチナ側(イスラム教)とユダヤ側の二つに分割し、お互いに顔を合わせないように境界線を設けました。

近年ではユダヤ人がヘブロンに強引に住み始める入植者問題が深刻化しています。

アラブ民族の先祖「イシュマエル」と、イスラエルの族長(先祖)「イサク」が和解して共に父アブラハムを葬った「アブラハムの墓」。

イスラエル側(ユダヤ教徒)は「元々我が先祖の土地」であり、そこへ戻ってきたんだと思っている。

でもパレスチナ側からしたら(イスラム教徒)、自分達が住んでいた土地を奪われている。

アブラハムの墓は1つ。「ユダヤ教徒側」と「イスラム教徒側」(キリスト教徒はどちらでも)に境界。

紀元前の聖書時代、モーセに率いられて「約束の地カナン」を目指し、後継者ヨシュアによって「イスラエル建国」を果たした時は、「侵略戦争」ではなく、そこに住む人々の悪質、性の乱行、子供の生贄などで腐敗していた土地を正しい律法の国へと導くためだった。(聖書的見解)

聖書モーセの旅【出エジプト使命】から【カナンの地】を目指して。英語の名前発音付き。
「モーセ」の生涯を生い立ちを含め、出エジプトから約束の地カナンを目指す荒野の壮絶なる旅を聖書(日英対訳)を引用しながら説明(英語の固有名詞発音付き)。ティムナ公園にある復元された「モーセの幕屋」やヨルダンにある「アロンの墓」も含めて紹介しています。

ユダヤ人迫害の辛い歴史も皆理解している。。。でも今のイスラエルの違法な入植とパレスチナ人への虐待や嫌がらせは理解し難い。。。

少しずつでも「イスラエル人」ながら現在の「イスラエルの入植と虐待」に声を上げる兵士やリポーターも増えてきているようです。

アブラハムの墓でお互いの和平を祈ってほしいです。

ハガルとサラ、その子どもたち ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の対話への道
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